ラーメン二郎 府中店 『大ラーメン チーズ』
コロナ禍は続いている。
たぶん、ずっと続く。
終わっているようで終わっていない。怯えているようで怯えていない。不可解で不明瞭なことが多すぎるせいで、我々は状況把握さえも許されていないのはいかがなものか。
真実が知りたい。
人が、影として蠢く状況を。人が悪意を以て暗躍していく有様を。オナラかと思ってちょっと出してみたら明らかに液体だったあのときの俺の顔を。俺はより深く知りたいと思って生きている。
だが。世界の解像度を上げることは幸せにつながらないことが多い。これは金言を得たな、と感じた。iPhoneからTwitterのアプリを削除したはずなのに、俺はまだ世界とつながろうとしている。
下着の色、財布の中身、隣の家の献立や入浴剤の種類まで知りたいのだ。
夫が嫁のシャンプーを使いまわししている家庭は上流階級だ!!
お前のハゲ頭にはメリットでもつかっておけ!と言われるのが一般家庭であり、日本人のハゲ進行速度は加速するばかりである。
懸命なるリバプールファン・プレミアリーグファンならば、シャチリが髪をルーニーした(動・自:「植毛する」)ことにはすでにお気づきだろう。
同義語に「コンテる」、慣用句して発展したケースだと「コンテの補強が成功」などと言える。
世界の解像度を上げることは幸せにつながらないことが多い。田舎に住んでいる老人は、この世界に様々な人種が存在していることすら否定する。
小説を読み、テレビを見て、スーパーで買い物をしているはずなのに、情報は分断され、どうにも世界を広げることができないままに生きている。俺はそれを生き方として否定できるものではないと考えているが、自分の中にそのような感覚を抱き続けることだけはやめていきたい。
動物とも触れ合わず、植物の成長と付き合うように、己も老けていくということだけは避けたい。
未だにフェライニをセンターに置いてクロスを上げる戦術を使おうとするモイーズの頭をひっぱたいてやりたい。
世界を鮮明に見ようとしてしまう。世の中には苦しみが溢れており、大麻は反社の金銭源になる、とかいいながら俺たちは農園で手を痛めながら働かされているコーヒー奴隷には言及できない。香港が可哀想というのならウイグルはどうなるんだ!と、お前自身が興味のないことを急に持ち出されても困る。
世の中は全て縁起しており、一つの綻びを直したところで如何ともし難いと思わされることがそこいらじゅうに転がっている。
目の前の問題を一つ一つ解決していけばいい。法律で禁止されているから、という理由で「だから悪いことだ」と決めつけることもしない。
ラーメン二郎が身体に悪いって誰が決めたんだ。中学生の頃から病気もせずにラーメン二郎を食ってる50代の人、俺は知ってるぞバカヤロー!
こ、
こ、これは!?!?!?
なんだか久しぶりな気もしない。でも久しぶりな気がしている。
並ぶ廊下で足の痒みを感じる。そうだ、ここの飲み屋街には猫が住んでいる。
とか言いながら対面すりゃ痒いことも忘れるわけだから。俺は幸せなのかもしれない。
俺の心を奪うのは、茶色い丼の中で一際黄色いチーズのそれだ。俺はネズミに近いブタに擬態する。
ズルッとやれば鳴呼…最高にぶっとい麺に負けない力強い非乳化スープがここにある。
何度も言ってきたが、これは非常に贅沢なブイヤベース二郎だ。矢張り野菜の旨みが半端ではない。
俺の見立てが正しいのであれば、だ。
そしてチーズで巻いたブタさん…俺はあんたに会いたかった!家でこれやる勇気ねえんだよ!!
堪能した。
サクッと完食フィニッシュムーブ軽く会釈して退店。
敢えて北府中方面から東八道路を突っ切って杉並を目指す俺。まだ、秋の気配なんかなかった暑い夜だったが。
俺の頭の中にはseasonが流れていた。
もうすぐ秋だから。