「キリヲさんが恋だの結婚だの言ってるの、馬鹿馬鹿しいよ」
「そのまま貫き通してラーメン食って早死にしてください」
そっくりそのまま言われた。そりゃあもう、屈託ない笑顔で言われた。怒りすら湧かないほどに清々しい笑顔で。
言う人間が変われば受け取り方も変わる言葉だが、この人…首にUSBメモリーをジャラジャラ言わせ、アフロ気味のパーマにサングラス、アグリーセーターに身を包んだデボネアおじさんに言われてしまえば仕方ない。
この方の名誉のために念の為言及しておくが、多少言葉を盛ったことは認めておく。
俺はもう、腹をくくるしか無いのかも知れない。
もぅマヂ無理。諦めよ。俺、心の底から温かい家庭を築きたいと思っているタイプの人間だった。何よりも妻を愛し、子を愛し、ラーメンなんか二の次で生きる姿を想像していた。
それが、どうだ。身の回りに集まってくる人々は癖の塊みたいな人たちしか集まってこない。
クセ強いひとばかりである。俺を中野で拾ったのは、何回車検を通したかわからないデボネアだった。
どうも最近は中野に縁がある。中野どころか高円寺なんか週3くらい居る印象すら自分で感じる。
最近は信濃町への定期券も手に入れたが、俺はヨツサンに行くこともなく、せいぜい代々木止まりで済んでいる。
クセつよスポットをラグランジュポイントとして俺は衛星のようにぐるぐると世界を回っている。その遠心力が磁場を生み出し、何か面白い話が寄ってくるなら万々歳だ。
結婚相手も純粋な恋愛相手も…そう、中学生みたいな恋愛をいつまでもしたいとか思っている俺は、たぶんもう望みを立たれたと感じた。
じゃあ、どうすればいいか。
俺はニンニクとニラという最高の組み合わせを、大量のアブラと細かい肉で慈悲もなく炒められたブツを麺で飲み込むことを選んだのである。
こ、
こ、これは!?!?!?
大先輩たちにドナドナされてやってきた中野新橋。
北の大地に生まれ、海に興味を持たなかった俺はその意味を…5行後に理解する。
ヤニの臭いは危険な男たちの香りだ。
まずは五目チャーハンで口の中をメンテナンス。
これはチャーハンではない、カニだ。
麺引っ張り出してズルっとやれば嗚呼あああああああアッツ!!あっツゥイ!!
ベーリング海から流れてきた流氷が海を封じ込めるかのごとく広がる油膜…すべてを理解した!
後を引く味は至ってシンプルなタンメンだが…これまじで都内一レベルのニンニクじゃねえか。
最高か。上等だ。
ニンニクは男のフレグランスだ。
液アブラには胡椒が合う。俺はこれを最近知った気がしている。
目の前のおじさんからチャーシュー1枚パスが来る。俺は感謝の土下座を油面ギリギリスレスレで敢行した。
一味ではなく七味が添えられることの意味よ。俺は何も理解せずに涙を流す。矯正排熱のためだと言っても過言ではない。
底の方から麺持ち上げれば細かい肉片とニンニクのかけら…これか、俺が食いたかったものはこれだったのである。
堪能した。
サクッと完食当然 #完飲制倶楽部 ゴクゴクブチカマしお会計…ゴチになりますして退店!!
飯を食った後にああだこうだ語り合うのは最高だ。
眠気と戦いながらも湧き出る感想をぶつけ合うサマはヲタクそのものだ。
感動のひとときであった。絶対結婚しよ。恋しよ。