呼び水
呼びグル 呼びアブラ
何かをきっかけに場が活気づく。
その瞬間のスイッチの入り方を、俺はいつも見逃したくないと思っている。
何がファクターだったのか、何が期待されていたのか。だいたいわかるようでわからないものであり、全員がゾーンに入った瞬間の感動というものはもはややめられないとすら思っている。
そういう議論をいつも期待して、たまに会うメンバーに再会して意見をもらって、自分はこのつながりにおいてどういう役割が与えられ、どう作用すると場は動くのか。こんなことを考えながら人間関係を構築する奴は実際のところただの勘違い野郎の莫迦であり、まあ出会いとは自然に、縁によって起こるものである。
マルチ商法の誘いを受けたことがないから、俺の運命は本当に健全なものだと言えるだろう。
閑話休題。
久々に「打ち合わせ」などという大仰なものを経験し、「凛行きたくないですか」という参加者の発案に「二郎系食ったら今やばい」と別の方から一蹴を喰らい、おそらく一番ショックを受けたのは俺だろう。
六本木に行ってめんばりして帰る予定だった俺はその提案の時点ですでに完全に二郎の口になっており、表参道から渋谷を経由して帰路。どうやって帰ろうかと考える暇もなくイノヘッドに乗れば無条件でウィーアーザ明大前から京王メインラインに乗りかえてしまう俺はもはやパブロフのなんたらで。
時間的に「このまま仙川で降りても終わっている可能性が」などと過ぎるところがなんだかもう救えない。
無事空席待ちのある店内に吸い込まれた私は「今週ぶっといのばっかだな」とか思いながら、何も考えなかった。考えることをやめる前に思考ができなくなっていた。
一つ思ったことといえば「オヤジ、今日も腰入ってんな。」だ。
こ、
こ、これは!?!?!?
大で豚入りにするとさすがのボリューム。デフォでヤサイ多めな店ってあんまり行かなくなったな。
このお世辞にも綺麗とは言えないアブラこそが旨味のファクターだ。
麺引っ張り出してズルッとやれば嗚呼…ブルンブルンだ。ブルンブルン。
ボキボキの次はブルンブルン。
ぶるんぶるん平田さんの実家は三田のパン屋だ。
オイリーなお野菜スープと相まって美味すぎるわけですよ。
豚広げてみりゃ美しいチーズの調べ。肉肉しいミッチリ感のある豚。
完全に当たり引いたら府中でも魔法がかかるものだ。
ニンニク溶かしてアレすれば最早何も敵うものはない。確かなラーメン二郎を俺は食べたかったのである。
大満足完食フィニッシュムーブ軽く会釈して退店。
営業が終わったのか定休日なのか、隣の飲み屋のドアが開いており、奥には目を光らせた野良ニャンコが鎮座ましましていた。
あの猫愛されてんな。
俺も愛されたい。