丸山吉平 『丸山ベリーリブ 大盛りライス わさび』
季節の変わり目は風邪を引きやすい
なんてまあ皆当たり前のように言い続けてきたし、当たり前のようにそれが風邪だと思い込んでいた。
毎年毎シーズンこんなことばかり書いていて。私は飽きてきたのですが、皆様はいかがでしょうか。
そんなことを言いながら私はまた体調を崩した。おそらくは過労によるものだが、これは労働によるものよりも人生を取り巻く問題であり、私程度で労働が苦しい、などと言っていてはどうしようもないと思う。
贅沢ばかりをして申し訳ない、と懺悔をして許しを請うている私だ。
木曜から完全に喉風邪を拗らせた。オンザコーナーでのヘアカットとラジオ収録をキャンセルし、家で寝た。完全にアレだった。熱こそ微熱であったからこそ翌日はかかりつけ医に行ってから出社と考えていたが、朝起きてかかりつけ医の予約サイトを見れば「学会参加でおやすみ」ときたもんだ。
医者は5年前の知識が通用しない、なんてよくある話だから。俺は勉強熱心な医者を信じたい。
力尽きて寝て起きてみたら熱が上がってたので、会社に電話して寝た。
悪夢はそこからだった。
我が家に侵入してくるエルトン・ジョンに化けた悪魔。
なんだ貴様は…喧嘩売ってんのか!!うわっ!てめえっ、人が熱出して寝てるっつうのに勝手に上がり込みやがって!!警察呼ぶぞあああ
ああああああ!!
トンカツwww
トンカツくせえこいつwwww
てめえ畜生、なんてもん食ってきやがって!!
俺と行く予定だったのに一人で行きやがってえ?…ボトムズ?
ボトムズ見るか?…
って。
開けられた扉。
流れ込むトンカツ臭。
欲望と秘密とアブラの暴力。
吉祥寺が燃える。
圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躪しつくす店。
ささやかな望み、芽生えた愛、絆、健気な野心、老いも若きも、男も女も、昨日も明日も呑み込んで、走る、炎、炎。
音をたててキリヲが沈む。
次回「丸山吉平」
不死鳥は脂を注いだ炎を浴びて蘇る
(敵の返り血で染まる文章)
こ、
こ、これは!?!?!?
ででで、デカすぎ多すぎだろ…
若干の頭痛を引きずりつつ翌朝俺、神田まで行った。250という最良の選択肢がもろく崩れ去り、俺の目の前には「丸山ベリーリブ 3,900」の文字。
だが俺はくじけなかった。
だって俺
トンカツパーフェクトソルジャーだからね!
お塩で一口食えば嗚呼…アブラ甘ぇ…スイカに塩と同じ理論だ。
わさび醤油仕立てて食えば…なんども言うがこれは豚のお刺身だ。タタキどころではない。極上のお刺身だ。
美味え…そして減らねえぞこのトンカツ…
大胆にもソースをぶっかけて堪能する余裕もあった。
キャベツの上に乗っけて素早くソース遊戯。サクッと食えば嗚呼…俺なんて罪深いんだろう、
罰として辛子たっぷりの刑!
アァーン何度でも罪を被ってその罰を受けるワーンなどと申し上げておりました。
レッドショルダーの赤はもっと暗い。
しかしやはり何度食ってもこのトンカツには醤油だな。俺は確信している。
脂っこさも実はソースより強く感じられるのだ。ソースのあの甘さっぱり感って偉大だよね。
サクッと食いきれず当然悶絶腹上死確実になりながらも完食フィニッシュムーブ軽く会釈して退店。
昨日、無粋なエルトン・ジョンをぶん殴るに至ったあのトンカツ臭が、自分の衣類から漂った。
俺はそれを嗅いで幸せになったが、流石にバンド練習前には着替えた。
エチケットさ。それがMORALさ。