その昔、俺は肉体労働をしていた。
肉体労働を、していた。
すると思っていなかった。身体もデカイし体力にもそこそこ自信があるし。スタミナっていう点ではまぁ確かにできないことは無いと思っていた。
運動をするということに関しては別に嫌いでもなんでもない。歩くの大好き。走るのは…今はちょっと嫌だ。膝が、膝が悲鳴を上げる。肺活量という意味でももはや走るのは難しい。何より足痛いし。無理。歩くのはいい。走るのは無理。
そういうことについてようやくわかってきた。
あの頃のプライド…なんか72キロを8時間とかで走りきったアレはもうゴミ箱に捨てることにしたんである。
その昔、俺は肉体労働をしていた。
働くことに関して逃げ続け、なんか一年ニートして大学院まで行っていろいろ先延ばしにした。なんかようやく心を落ち着かせ、ちゃんと就活しようと思ったほぼ9年前の俺、ちゃんとした就職先を見つけ、新卒で働いて俺は医療を助けるんだ、と。
子供の頃にブラックジャックを読んで何かを思いあたるところがあった俺の心の行所を落ち着かせるために就職した会社で華やかな人生を送ってやろう。食っていくための仕事、とかそんなことを考えずに「使命」みたいなものを心の中で輝かせてやろうと決意した先にあったのは、まさか予想もしなかった「手先の器用さを必要とする肉体労働者」という着地点であった。
いや、、、無理やろ…
なんか初っ端から超絶パワハラ上司にぶち当たり、「あ、変なやつ無理」みたいな会社で居場所をなくし、俺だけ退職のときに社長との面談がなかったという強烈な前例を作った。逃げるように東京に来た俺、そこからずっとデスクワークか接客業しかしてこなかった俺。
それは、俺の求めるところだったはずだが…すっかり太ってしまった。
昨今のコンプライアンスが改善された世の中において、俺はどうにも「すべての人間の尊厳」というものへの理解の高まりを感じる反面、まだまだ偏見と冷笑の蔓延は改善されていないように感じる。
自分がそういう立場に置かれた場合、どうするのか。そんなことを考えながらも、俺はなんだか体を動かして働くことの良さをしっかり感じることができて幸せだと思ったのである。
こ、
こ、これは!?!?!?
肉体労働の後は塩分が欲しくなる。そう思っていた時期が、俺にはありました。
昼下がりの武蔵境はわりかし静かで。でもなんというか心は燃えていて。
ズルッとやれば嗚呼…美味い。やっぱ玉子麺のほうが美味いな、とか思いながらも涙で明日が見えなくなった。
これが武蔵境の味か。遠くシンガポールに行ったあいつを育てた味だ。
「写真撮りまくるけど気にしないでください」とか言いながら堪能した。
サクッと完食軽くお会計して退店。
俺はある技術を入手した。
それは必ず今後に活きることだと思いながら、明日も早起きすることを決めたんである。