朝
二人の老人から連絡が来るようになった。
一人は、大豪院邪鬼のごときオーラを纏ったおじさんである。
まごうことなきおじさんゾーンに入り込んだおじさんだ。
おじさんは、深酒をやめた。深夜まで酒を飲むことがなくなった。それは緊急事態宣言による酒類販売19時ラストオーダーとは全く関係がないように思える。
そのおじさんは幡ヶ谷の某CBFというお店に行けば必ず会えるおじさんだった。おじさんは仕事柄出張が多いので、たまにCBFに行けない期間が長くなると「様子見てこいよ」などとLINEをしてくるくらいCBFを愛していたおじさんだった。
おじさんは、朝5時に起きて散歩をするダイエッターとなった。
そのついでに俺へ必ずモーニングコールを寄越すことになったのである。俺が頼んだのではない。あくまでおじさんは、朝起きらんない人間に進化を遂げた俺に対する嫌がらせのごとく「起きるのおせえよ」「健康的な生活を送れよ」「朝から食べるハムエッグは最高に美味い」などと猛烈なほどのLINEを送ってくるようになったのである。
挙句の果てに俺に送りつけてきた言葉が「泥酔するより朝ポーク焼いて食った方がうめえよ」であった。
これには俺も閉口するしかなく、朝送りつけてくるLINEを見てなんか面倒くさいなぁ、嫌だなぁと思うよりも
「俺にかまってくれるいいおじさんだなぁ」という感想が湧くようになった。
もうひとりのおじさんは、アフロに髭、常にサングラスでその可愛い目を隠しているおじさんだった。そのアフロは今やドレッドになっている。
高血圧を武器に、睡眠時間5時間ほどで起床。朝起きたらまずは愛車のminiを洗車。暇さえあればオイル交換に出かけるそのさまは、オイル交換ついでに外で隠れてこそこそタバコを吸ってきていたうちのオヤジの姿と被って見える。
奇妙なことといえば、このおじさんはまだ20代かもしれないということだった。
おじさんは仲間のモヒカンおじさんを連れて東中野まで来ると言う。
俺も東中野について店の前で待ってみれば、伝説の丸顔ビッチまで10分遅れで来るというから驚きだった。
我々は寒空の下、大江戸線入り口でその丸顔を迎え、ひとしきり悪態をついたのち、仲良く揃っていつもの黄色い暖簾をくぐったのであった。
モヒカンのおじさんを除いて。
こ、
こ、これは！？！？！？
ハイパー花木ルーティンによれば今日はクラシック濃いめの日。
ダイエッターの俺は迷わず大盛りを選択した。
成長した…特盛にしないだけマシというのは俺の中だけで許される喜びかもしれない。
ズルっとやれば嗚呼…濃いめオイチイ汁マジで最高だろ…タマランチ会長、いい加減オリンピック中止にしてくれませんか？あれ？もう引退したっけ？
写真を撮ることもなく喰らいついていたらあっという間になくなりましたね…たまらんひとときでしたねぇ。
堪能した。感想短いけどめちゃくちゃ美味かった。
サクッと完食当然 #完飲制倶楽部 ゴク道ブチカマしフィニッシュムーブ軽く会釈して退店。
モヒカンのおじさんの食い終わりを見届け、帰宅して仕事。
今夜も俺はお鍋を食って食物繊維を大量摂取する。
そうして俺は完全究極体、80キロ台を見ることを夢見ているのである。
誰か体組成計をプレゼントしてくれませんか。
