めちゃくちゃふざけた男がいる
きわめてふざけた男である。まあ俺もふざけた男なのでおあいこというか、むしろあの歳までふざけているあの人がいるからこそ、俺は十分に自由を謳歌していることができる。
なんか異様なほど仲良くなった。
俺、基本的に先輩とされる人種とはあまり仲良くなれることがなく、その理由としてはとにかく生意気、上から目線（嫌だね〜この言葉。死ぬほど嫌い）、挙げ句の果てには一人っ子体質のくせに年下に偉そうにする俺だからやっぱり先輩たちが近寄ってきても「こいつめんどくせえ」で終わるはずだった。
のに
30過ぎたらなんかそんなこともなく、この人と他数人（高円寺の美容師とか中野の紫の人とか）はどうしたって俺を可愛がってくれるから嬉しい限りだ。むしろ本当に助かっている。
イキっていた。
おじさん、イキっていた。
カーシェアで茨城まで行きま専科、などと前々日まで息巻いていたのに、前日になって「やっぱ電車で行きマスマティックス」などとほざいており、俺はなんだかこの人疲れてんのかな…脱獄してきたばっかりだしな。
なんて思いながら「カームダウン、ベグビー。じゃあとりあえず秋葉原駅で落ち合おう」と言いつつも、嫌なことに気づいてはAトレインばりに3秒で秋葉原を脱出しようとしていた。
奴なりの気遣いもあった。俺が秋葉原に居座るのが嫌ということは分かっていたらしい。俺はコンパウンドVを左腕にブチ込みハイになった状態でやつの前に現れてはウザ絡みを繰り返した。
守谷駅までの道のりはあっという間だった。こんなにもすぐに着くのならなぜもっと早く来なかったのだろう。
人に夢をもつことばかり語っていて、俺は全く夢を追っていなかった。自分自身が最大の敵、とはよく言ったものだ。彼は、勇気を持てない俺に一筋の光と希望を差し与えてくれたと言っても過言ではない。
「『口淫矢の如し』だ」
俺は全てをひっくり返す奴の言葉に無言の抵抗をし、Instagramラーメン界唯一無二の気持ち悪い人の座を、この人とガルフィー奴に譲ろうと決めた。
いい歳こいて「何歳になったんですか」って聞かれて
「（さんじゅう）四ちゃい！」とか答えるのまじやめたいからだ。
こ、
こ、これは！？！？！？
まさかのテーブル席…予想してなかった「自分で運ぶ」システム、他の客の通らないコール…ここは修羅の国だ…なんてカルチャーショックを受けながらも奴のラーメンまで運んでやった。
至ってクラシカルな出立ちかと思いきやハイパーカロリーマウンテンじゃないか。
ヤサイ食い進め天地返してみれば嗚呼…
どっかの誰かが「三田バイブス極まりし地、守谷」とか言ってたのがめちゃくちゃよく分かった。
デロ麺、乳化気味、ブタ多い。色々と期待してたがこれは裏切らないブツ。美味いぜ。
ウデ肉かと思えばしっかりとバラ肉のブタ。俺、一抹の不安を抱えつつ一心不乱にパクついた。うめえ。
味変アイテムが近くにないとかなりキツいな…麺量めっちゃ多いじゃん。
最後結構死ぬ気で食らった。
大満足完食フィニッシュムーブ軽く会釈して退店。
いいかい無職さん、ラーメン二郎を、守谷のラーメン二郎をいつでも食えるくらいになりなよ。
などと言いながら千円札に火をつけていた男に、俺は深々と会釈した。
二人して太っているので南守谷駅まで歩いた。
痩せるわけねえだろ。
