ヤクを…ヤクをくれ…
俺は聞いた。どうしたんだ兄弟。
ヤクを…ヤクを…
言い続けるヤツに俺は混乱する。瀕死に見えるかと言えば、そうではない。ただただ頭を抱えている。メゾンド四谷の階段で腰をかけているやつを見た時、俺は「ストレートエッジを履き違えている」と思った事もあった。
劇薬を飲んだ代償はあまりにも大きい。俺たちはその梅風味の飲み物を合法的に、5.5杯まで飲んだ果にはハイを迎えることを許される。極めてハイになり、俺達は電車の乗り方すらも忘れてしまう。電車でおばあちゃんと談笑したこともあったし、隣に乗っていた3歳位の女の子とも笑い合うことができる。それは幻想ではなく、現実におけるエンパワメントの一つと言えるだろう。
ヤクを…
どうした。ほしいのはクラックか。それともLか。こいつらとシャブだけはやめておけ。そういう物言いはまだ流行らない。
痛みが辛いか。お前の欲しいものは何だ。
「…アルピタンを…」
…アルピタン?新しいドラッグか?
俺は聞いた。シリンジが必要か?
やつは答えた。「俺はドル札を持ち合わせていないんだ。」
やれやれ。もう脳に回っちまっているようだ。この調子なら夕方に
「頭痛なし!勝った!!」なんてLINEが送られてくることは容易に想像できる。
いい考えがある。乗るか?そう言った俺はやつより少し遅れてキマってきていたようだ。
中野で電車を降りた。そこからサンプラザ前で馴染みのバスを待った。目の前にそびえ立つ建物はそのうちランドマークとしてのアイデンティティを失い、崩壊していく。俺には開発という言い訳が退化とセルアウトにしか映らない。
ろくなもんじゃねえ。俺はこの歌がとんぼだと勘違いしていた。
そんな話をしているうちにやつは言った。
「アルピタンを最高に吸収するためにはカタメ・コイメ・オオメと唱える」と。
俺は何食わぬ顔で営業している店を見て少し安心したと同時に、どんどん気が大きくなっていったのであった。
こ、
こ、これは!?!?!?
いつまでも来る機会に恵まれないと考えていたところにこの脳味噌爆発コンビで来れることになるとは思いもしなかった。
見ろよ…最高にアガる面構えだ。俺お目当てのお肉たちもだ。
ズルっとやれば嗚呼…最高にしょっぱくて最高じゃないか…俺はこういうのが食いたかった…全然油オオメじゃなかったけど。
おお、五苓散が吸収される。おそらく思い込みだ。
ただしこのお肉たちはマジで最高。
ニンニクを乗せてもいいし、肉巻きご飯もマジで完璧。
嗚呼…次は油オオメだけでいいな。麺たくさん食べたい。
初めての店ではノーマルと答えるのがベストだな。
サクッと完食フィニッシュムーブ軽く会釈して退店。
ヤクが効いた相棒の様子を見れば、おそらくこのお醤油汁がもっとも効くブツだった模様だ。