中華料理 布袋 本店 『ザンギ定食A』
「岩じゃん」
親愛なる友人は、唐揚げを食べる私の横でそう言い放った。
鶏もも肉の唐揚げというのはなぜここまで美味しいのか。そもそもがひどく硬いんである。硬くない唐揚げが美味しい、と思うこともあるが、やはり硬質な鎧を纏った唐揚げの方が圧倒的に美味しい。
肉汁も全くと言っていいほど逃げていないブツ。
うますぎるよね、唐揚げ。
唐揚げの写真を撮るのは難しい。あの茶色い塊を、積み重ねられた山の焦点を、俺は一体どうすればいのか。
先日、沖縄にてノスタルジック極まりない遊びとしてクソ硬い唐揚げを食ったが、アレはここと同レベルの瓦礫の山であり、岩の集合体であった。悠楽のほうがもう少し小さいかな、って感じはする。
最近、エビデンスについては自ら調べたわけではないが「鶏肉は他の肉より圧倒的に旨味が多い」という言説を見た。豚や牛が熟成したとしても勝てないという。
ナチュラルボーンマスターなのである。より脂が美味しくなるように、と品種を改良された鶏ならどうなってしまうのか。
そんな想像をしてはみるものの、俺にとって唐揚げとは底が見えた料理で。ようは硬い殻に守られプリッとした鶏もも肉から若干のジューシーなエキスが流れてくればいいとだけ思っている。こんなに単純な料理はなかなかない。
だがしかし。底が見えているはずなのに、最強なのだ。
お分かりいただけるだろうか…底にあるのは電流が流れる針の山だ。
岩みたいな唐揚げに食らいつくことは至高の喜びである。
それを知ったのは明らかに実家であり、あのチキチキボーンの市販の粉。水溶き仕様。アレは結構な粘度で鶏肉を守っている。
おおよそ「食べやすいサイズに」なんてことはそこまで考えず「揚げ時間」くらいしか考えていなかったうちの両親のブツ切りもも肉によって私の口を鍛えられた。
そしてなんの因果か全くと言っていいほど猫舌とは無縁な私の口腔、ならびに身に付けたテクニックにも感謝したい。単に舌が短いせいか。
親友Fがずっと昔からレコメンドしていた布袋。ライジングで幾度となく食った布袋。ようやく俺、札幌帰省一発目の食としてこいつを喰らうことに成功したのである。
こ、
こ、、、、これは!?!?!?
お、おう、悠楽レベルではないがこれ、やっぱり噂通りのブツだ。このレベルのザンギ7個って普通じゃないわな。ちなみに悠楽はこのサイズが14個くらい出てくる。
サクッとやれば嗚呼…「サクッ」じゃねえ、「ゴリ」だ。
俺はくるみ割り人形か。
しかし布袋のいいところはこれだ…タレ直がけである。ネギたっぷりなところをすくってぶっかければこれだけでエクスタシー。
一口やれば何て爽やかさなんだろう。唐揚げの横を潮風がbreezeした。それは真冬のブリザードというには優しすぎる。
胡椒やら山椒やらぶっかけたりなんだりしているうちに私は完全にライスマネジメント完全失敗。
俺は負け犬だ。
ライスおかわり注文をしようかと思ったら厨房内で「あと何分です」といった騒ぎが起きていた。
完全にライス切れだと認知し、私は黙って唐揚げにタレをかけ、水を飲んだ。
ライス大盛り必須やないかここ。
サクッと完食軽く会釈して退店。
美味かった。
でもライジングのあの青空の下で食うこいつには勝てんな。
勉強になった。
とかブツブツ言いながら
こ、これは!?!?!?
続く。