とある世界ではガチンコ勝負のことを「セメントマッチ」と呼ぶ。
覚えときな。
手抜きなし台本なし、男が自身の男を上げるための真剣勝負は時として、誰も予想していなかったタイミングで訪れる。時、場所、それらをトータルとしたシチュエーションを一切選ばない戦いは突然、天から降ってきたように目の前に現れるのだ。
そう、打ち合わせを無視してアンドレの脚を執拗に蹴り続けた前田のように、ヤツは思いもしなかった相手になるのである。
私に戦う姿勢ができていなかったわけではない。これから語ろうとしている勝負を私は余裕で腹の中に抑え、勝利の美スープを飲んで軽く会釈して退店した。それは間違いない。お店の外にゲロを吐いて通報されたわけでもない。
そもそもの話だ。私は己の誓いとして平日夜のラーメンを禁じたはずだったのだ。耐えられんかったんである。だってこの木曜はジムが休みだ。
どこにも行く所のない野良犬は好き勝手すると決めたのだ。
などと自己正当化の鬼と化した俺は当然新宿から京王線乗り換え!どっちにしようかなー、なんてその時までは思っていたが、俺の目の前に止まっていた電車は各駅停車。
完飲制倶楽部の務めを果たさねばならぬと思いつつもピンクの食券を買ってしまう俺のピンク好きはどうしようもないな!と一人で納得した。
店内は久々にヒリヒリとした空気が流れていたのである。麺半分後からコールおじさんが怒られていた。そう、ガチでだ。
こ、
こ、
これは!?!?!?
いんやー、久々に来てみたものの、これ目の前にドンっと置かれるとやっぱビビっちまうね。アブラたっぷり豚は…この話は後でだ。
ヤサイをアブラで食らえば矢張りここでしか味わえないブツが最高すぎるわけだ。
さらにちょっとばかしニンニク添えて食うのが俺の流儀だからよ。
ブタどかして標高確認。うむ!多いね!!最高だ!!
麺引っ張り出してみればクゥー!!麺マジでうめえ…硬めのみっちりした麺、マジでたまんねえわ。うわしかも塩分バッチリブラックスープ!!いんやー、当たり引いたなー。
と正直に喜べなかったのはこのブタどもがあるからだ。
全部セメントで作られたブタであった。口から水分を奪い、顎を疲弊させ、そして腹を圧迫するのだ…
大杉漣…
ガチ過ぎた…途中から完全に真剣モードだったぜ。
なんとか腹パン完食完飲制倶楽部ならず!フィニッシュムーブ軽く会釈して退店!!
ひたすらに重たい腹をなんとか持ち上げて吉祥寺までまっすぐ競歩北上。
臭いよニンニキ!とか言われながらリビングで悶えた。
懲りないからまたすぐに行くと思う。それが仙川好きじゃんね。