唐突に訪れた別れに、俺は連休最後の月曜を突き動かされた。
寝耳に水、というわけではなかった。
前の週の月曜、そう、敬老の日に「あと一、二ヶ月だから覚悟しろ」と宣告されていた。
あまりにも早い別れではあったが、俺はすべての準備を整えてはいた。だからこそ、
その日のうちに札幌入りして、翌、火曜日は朝から買い物に札幌の街に出かけた。
革靴は茶色のアシックスの良いやつしか持ってないので、ABCマートに靴を買いに行ったら、いいのがなく。歩き疲れた俺はもうどうでもよくなってドン・キホーテに履き慣れた靴を買いに行った。
天下のドンでも流石にジジイが吸っていたショートピースはなく。
俺は狸小路からすすきのまでダッシュして交差点のタバコ屋でブツを回収した頃にはすでに11時を回っていた。なんていうことだ…前日の電車遅延がなければ、俺は無事にニンニク臭い口で祖父母宅を訪れたに違いない。
札幌二郎も信月も諦めて俺は岩見沢に向かった。
そこから先の話はいいだろう…俺は初めて経験することばかりであった。祖母の弟が如何にすごい人間だったか、そして親父の妹の旦那と酒で勝負してもマジで勝てねえなと思うばかりで、挙げ句の果てには普段吸わないタバコなんか吸ってしまってアレだった。あとはあれ、最後に残ったメンツが俺以外全員北大卒だった(親父含め)っていうこの俺のコンプレックス具合も相まって俺の酒は進んだと言っても過言ではない。
翌朝はガンガンする頭を抱えながら葬儀だったが、流石に親父が泣いているところを見ると俺もグッと来た。ジジイの棺桶に、一本だけ長めに出したピースを入れたところまでが俺の仕事だった。亡き人を惜しむための涙は惜しむものではないよ。俺は今回、それを学んだ。
安らかに眠ってくれ。
そう祈って俺はバスの時間を調べ、火葬場行きのバスを見送った。
俺はくさいラーメンをさらに御焼香としてくべることを選んだ。
秋の北海道は思った以上に暑く。汗をかいた俺は当然ながらネギチャーシューを選んだ…矢張り昼時のYMOKYはガテン系で大盛り上がり。サクッと着席しても提供まで時間がかかる。緊張感を感じつつ待っていたところに現れたブツを見て俺は、緊張の糸が一気に緩んでいった。
こ、
これは!?!?!?
山岡家でチャーシュー増しは初めてだったろう…
家系ではない系 ではあってもその見た目はどう考えても家系とラーショのマッシュアップにしか見えなかった。
ズルッとやればマジで緊張の解ける味わいだ…嗚呼、山岡家っていいな…俺ずっと何か勘違いしていた。これは北海道のラーメンじゃなかった…関東のラーメンだ!!北海道のお高く止まったラーメンプライドに受け入れられないわけだ…だがしかし愛されているのも事実!「みよしの」と同じくらい愛されているという事実!!俺…山岡家好きだ!!
辛いのとニンニクぶっかけて食えば帰りの飛行機すら気にしない気持ちでいっぱいになった。
バスは時間通りくるかな…とか思いながらもサクッと完食フィニッシュムーブ省略俺の目の前でオペ回してたおばちゃんに深々と会釈して退店!!
帰りは4分遅れで来たバスに乗りながら余裕を持って乗った電車に座り込み、物思いに更けつつ井上陽水を聴きながら新千歳空港に向かった。
目を開ければ、海を越えたら上海、なんてこともなかった。
そのまま現実に戻りつつ、疲れ切った俺は朝起きられず昼からの仕事に向かう。
これは日記だ。俺はリアルを描く。
全ての想いを消化しきれぬまま、俺は、日々の足音を鳴らして歩いているよ。
31年間ありがとう。