調子こいてた日々だった。
ぶっこいてた。
忙しすぎて我を忘れてきた。
全部当てはまる状況だ。言い訳がましいように聞こえるが、事実でありそれを冷静に客観視したヴィジョンでしかない。
忙しさにかまけすぎてはいなかったか。自問自答は宙を舞い、虚しさとして消えず漂う。海を漂うプラスチックのように、砂浜に寄せられ、岸壁の泡に塗れてゴミとなる。
そういう気持ちを抱くほどに俺は負けた。戦いに勝って負ける、なんで昔から何度もあったが、この店に置いてはここ久しくそういった目にあうこともなかった。
書くのも辛いほどだぜ。ポルナレフのテンプレすら書く気が起きない。
こち亀のおっぱい巨大化とかどうでもいいんだよ!
まったく、素面で何書いてんだか。
事の発端は、元100キロの男ジマが着実にリバウンドしている(そしてすぐに断食をする)のにも関わらず「富士丸食いてえ」としつこに迫ってくる事であった。先週の台風前から口癖が「富士丸食いてえ」であり、「一人で富士丸行くとかずるいっすよ〜」などと言っては私の欲も高めていくのだ。
ジマは私が主催しているバンド『煙景寺』のベースであり、お調子者で小心者という絵に描いたうっかり八兵衛のようなキャラクターを活かし、散々痛めつけられた神保町ですら「行きましょうよ〜」と、すべてを忘れたとぼけ顔で願ってくる。
俺は奴が大盛りの食券を買う、などと言い始めたらそれに従うしかないのだ。いつだって俺は人間界最強(びっくり人間は除く)でいたいと思うのである。
箸の使い方や靴のサンダルばきは矯正できる。
しかし癖の強さは無理だ。直らねえ。
そうして我々はゾロゾロと16時台に富士丸到着。すでに外椅子満席。ぺちゃくちゃおしゃべりしたりサウスパークを見たりしていればあっという間に時間は過ぎる。
18時ちょいすぎ。入店。19時頃カウンター着席。
先に我々軍団3人に小上がりで食ってもらう。ジマの大盛りはなんと素敵な盛りで、うーむあれは食欲がそそるなぁなんて思っていた。
店主から何故か話しかけられる俺。何時から並んでた、明日は休みか、というのは確認だったのかもしれない。
明日休みか?って、そんなに恐ろしいことを言う人は…N澤さんとこの人以外いないかもしれないな。
俺は目の前に現れし丼を持った瞬間、死を覚悟した。
哀しい程鮮やかな花弁のように。などと口ずさみながら、俺は。俺であることを疑うしかなかった。
こ、、、、、
こ、、、、、、、、れ、は、、、??
こち亀のおっぱいよりも巨大で、醜悪で、我々がおおよそ登ることを許されない…
立ち入り禁止の札すら傾いた古びた城のようなこの物体はなんなんだ…
隣に座ったカメックスが引いていた。
ど、どこまで麺ですか…と思ってヤサイ退かしてみたらまじでひとつまみ分じゃん…どうなってるんだ、、、
俺がその前の週に西新井の富士丸で食ったブツは大盛りじゃなかったのだ。
底から引っ張り出した麺にアブラぶっかけ一口ズルッとやれば嗚呼…
富士丸STORM浴びた顔面の綻びは一瞬だったが、あの瞬間のみが永遠に思い出される。
今吹き荒れる 嵐の中 そう抱き合って 確かめ合って
失うものなど 何もなかった はずだね
開始5分でほぼ、今まで食ってきた大盛りの量のところまでクリア。そこからは箸が止まり、胃が震え、俺は15分すぎたあたりから咀嚼マシーンと化した。
たっぷりつけた生玉子が…俺の喉の潤滑剤にならないのは何故か…
20分すぎ。先に退店した連中が店の前を通ると店主に「心配してウロウロしてるぞ」などと笑われたがなんとか完食軽く会釈して退店。
驚邏大四凶殺を終えて店の外に出たら何回か吐きそうになったがまあブレの範疇。
結果的には町も汚さずトイレのお世話にもならなかったのは意地のなせる技であった。
大人に襲いかかるしっぺ返しというのは酷く重たいものだ。
しっかし。可愛がられたのかめんどくさがられたのかわからないのが怖い。
富士丸怖い。
キンキンに冷えた黒ラベルが怖い。
良い子は真似しちゃダメだぞ!