カレーほど多様性のある食い物はないかもしれない。
ラーメンも一緒だ。
ただしかし。ラーメンというのはどうも「イチから家庭でつくる」ということに関してハードルが高すぎる。自宅で簡単にラーメンが作れる、というのはそれ、最早しっかりと人数のいる家庭でしかなし得ないようなものである。しかも手頃な価格でチルド麺が買えるのだ。ぶっちゃけた話、下手な店で食うよりもチルド麺で食った方が美味しくできることもある。
それに比べてレトルトカレー。どうも私は好きになれない。おそらくレトルトカレーも進化していることだろうが、「家で食うなら家の味を食いたい」と思わされるのは矢張りカレーの罪深き文化性によるものだろう。
私はそういう家カレーが食いたい。数日前、昼に食ったゴーゴーカレーはあくまで腹を満たすものであり、私は満たされない思いを抱えたままこの日を迎えた。というか口を酸っぱくして何度も言うが、ゴーゴーカレーはカレー味のソースカツ丼だ。
多様性とか言いつつ俺の食いたいものは「家カレーの進化系」だったんである。インドカレーや欧風カレー云々ではない。あくまで家カレーの進化系として、そしてそれに美味しすぎるトンカツがのるものを、この700円出せばカツカレーが食える時代に1500円をブッ込む価値があるものを食いに浅草橋まで走るのである。
しかしながら。
なんか異様なほど混み合った店内を初めて見た…俺の隣に座ったおっさんは平気でその「線」を超え、俺は心の中で「またぐなよ。またぐな」と唱え、一向に皿のブツと向き合わずにスマホばかりいじるババアにキレそうになりながらも、しっかりと「お漬物いりませんので」と早めに申告して待った。
混み合うのも考えものだな、などと思わされた俺の心はすぐに浄化されたものだ。
こ、
こ、これは!?!?!?
店内を包むトンカツ屋特有の脂の香りを味方につけて現れたお皿…何者かの意思によってカレーの海にドボンされたカツが叫ぶ。
「俺を撮れ!!!」
「失敗は許されん」
俺の頭にテレパシーが届く。
「なにをしているッッ 早く食えッッッ」
お、おう、、、まずはカツにナマック岩塩ぶっかけて食えば美味え!当然特ロースやリブには勝てないわけだがこれでも充分に美味えよ…罪深えんだよなほんと。
カレーの泉に匙を落とした俺はその匙の先を口の中に入れた瞬間「ギンッッッ!!」という炸裂音が。
オーガ…鬼(のような脂身)がいたのである…
ここのカレーを「家のカレー」と評した人間がいたが、俺はそれに意を唱えたい。確かに家カレーの延長線上ではある。しかしながら、家では決して真似できないブツ。
それは大量の脂身だ。
脂身の甘みたっぷりコショウ系の刺激たっぷりのスパイシーカレーは無敵の味わいである。
カレーはご飯とカツにかけてもよしキャベツにかけてもよし、味噌汁で流し込むのもまた良し。
チラチラとこっちを見ながらもスマホの画面から目を離せないババアには感じ取れないゾーンに突入した俺は当然
「醤油をぶっかけたカツをカレーに浸す」行為をブチカマした。
The Ultimate Sin...
当然サクッと完食出来ずにご飯お代わりブチカマし「ご飯たりませんでしたか!?」と聞かれても「ルーが美味しすぎるせいです!どうしてくれるんですか!!」と(心の中で)叫んでラストのご飯を味噌汁で流し込んだ。味噌汁…ほんとここのお味噌汁大好き…
大満足で完食フィニッシュムーブお会計深々と会釈して退店!!
当然その後はスキップして帰った。
カレーが傷みやすい季節がもう、そこまで。