我々は9年の義務教育を受け、まがりなりにもこの世の摂理についての知識を得てきた。
その中で、我々は物理というものを学んできた。その昔、学問というのは一本の流れであり、哲学から始まり、この世の道理というものを道筋一本で結びつけていった。私は、そんな先人たちの背中を追うように、生と死を発端にこの世界の仕組みを学んでいっている。
しかしながら、学べば学ぶほどわからないことは増えていく。この世は思念の集まりであり、人々の思惑が力学として働き、「社会」という制限を生み、力学を抑制していく。人の想いには力が発生している。その磁場は…どれだけ本を読んだとしても理解し難いものだ。
神保町レギュラー営業最終日の今日、俺はまた物理に対する懐疑を覚え、哲学の道に進むことを決めるしかなかった。11時前に到着…ゾロゾロと集まる神保町の影たちに接続した我々。私は偉大なる先人たちに挨拶をしつつもその影…60体以上並んだ影と同一化した。絶対的矛盾を生む自己同一に懐疑することすらも懐疑せざるを得ない3時間の旅の始まりだった。
力強い味方たちが並べば怖いものもなく。2時間15分の旅路を終えた我々は入店を直前にして
「大5だよね?えっ!?大3に小1半分1?そう…」とか助手さんが肩を落としたのを見て
「冗談じゃないヨォ〜」と我々は口を揃えて言った。
入店し、いつものメンツを連れてまいりましたと鼻息荒くラヲタっぽくおどけた時の店主の呆れ顔が最早忘れられない。
だがすかさず「ナーニヲボンヤリシテンダヨォッ!!」というという怒りの麺追加はより、忘れられないものになった。
ソワソワを抑えられない俺たちはいつもより座高を30センチ以上上げて厨房を覗き込んでいたが…
嗚呼、大の量がどれも一緒だ、安心したなー、なんて言ってたら
「なんか言ってるやつにはオシオキだ」とか悪魔の囁きを喰らって
俺の丼のエリアだけ全ての力学が崩れた。
そして神保町に舞い降る雪…全ての化粧が終わった時、俺はニュートンを信じることをやめたのである。
化調の雪の後にぶち込まれたニンニク4杯。俺はそれを愛情と変換できるくらいの余裕を今年一年で身につけることができたのである。
こ、
こ、
これ、、、は、、、!?!?!?!?!?
どうしてこんな量の麺が盛れるんだ…
ブタの石垣で強固な城を築きあげるとは…
西澤店主、貴方は築城の天才 加藤清正の生まれ変わりか!
ブタエスケープする必要もなく確認できる麺の山…戦慄を通り越して笑いしか出なくなってしまったというのは誇張表現でもなんでもない。
天地返して…いや、無理。持ち上がんねえよ…とか言いながら頑張ってたら丼がwww丼が動くwww麺動かそうとしたら丼が動くwwwマジでここまでの経験は今までになかった。
俺は心を鬼にしつつも一口麺をすすれば何もふざける必要はなく、幸せの鐘が鳴り響き僕はただ美味しいフリでもなんでもなく最高な気持ちでギアを1速に入れて力を溜めていった。
幾度となく助手さんと目が合う…笑われたってなんだって、貴方が土曜のマエストロだった頃から背中を追いかけてたんや!とか言ってふざけていたら親指がどんどんと死んでいくことに気づいていった。
重え…重すぎる…
「足りない!?」とか言われてももう何も言い返せなかった。足りないと言えば俺の根性だけだと発奮し最高に美味いスペシャル部位を口に頬張った瞬間に胃から空気が抜けトップギアぶち込んでトランザムバーストをキメた。
横で食ってた連中が全員退席する中、ギリギリ最後の一口を…敗北感はない、ただただ俺は今年最後の試練を乗り越えた。
常に襲う神保町らしいスープを美味しく堪能できたぞ!やっ!た、、、とか言えないほど口から麺が喉を通らなかった…
なんとかギリギリ完食フィニッシュムーブ深々と会釈し5日帰省後そのまま直行を約束し暮れの元気なご挨拶して退店!!
木村師範代と死にそうになりながら水道橋まで歩き、やっぱ神保町店はこの駅じゃなきゃな、なんて呟いて俺はこの店をホームにできる幸せを噛み締めた。
今年も世話になりました。
来年は俺の方がモアベターよ!