「敗北を知りたい」
口々にそう呟くようになった。やつらのことである。
怖いもの見たさのびっくり人間が集まる…いや、びっくり人間には遠く及ばず。我々はただ「一般的な食いしん坊の最大レベル」を維持し続けている。びっくり人間と我々パンピーの間には超えられない壁がある。
「言っていることがわかるかいボウヤ」
115キロのデカブツは俺に言った。
この男はイキリ散らしていた。誰に似てしまったのかわからない。
もしかしたらもっと昔からイキって生きていたのかもしれない。一人っ子ってイキリやすいよね。チヤホヤされて育った、って自覚ないけどこの歳になったらようやくそれ、わかるようになったよね。自虐だから許して。そんなわけでイキリ散らした男と、酒を飲まないとイキれないいつもの男を連行した。
近場で予定があると休日出勤も楽しめるものだ。何の苦労もなしに俺はここにたどり着くことができる。並びを見て30超えててもまあいいだろう。助手さんに軽く会釈して接続し、この115キロの巨漢が持ってきたPS VITAで遊んでいれば1時間45分なんてあっという間であった。
「いつもそうだ。君達はいつも…つまらぬ勝利をもたらしてくれる」
「小生 敗北を知りたく 神保町に向かうところなり (脳髄)空師 ケイキリヲ」
巨漢以外の我々もこんなことを呟きながら入店した。
何時ぞやの光景がデジャブとなって我々を惑わす。軽く会釈して着席し「食いしん坊連れてきたんでよろ…」
言いかけた俺に襲いかかった言葉は
「ナーニヲボンヤリシテンダヨォッ!!」
店主は茹で釜にボンボンと後入れ麺をぶっ込んでいった。横にいた男たちはその光景に息を飲んだ。店主は魔法の言葉「釜が重い…」と一言呟き助手さんの不敵な笑みを誘った。
大丼3つ揃いも揃って小高い丘になった麺…二人はビビリ俺はまあ優しいななんて思ってたら、丼三つにスプーンを振るう店主まさかグル浴びせる!?ぶつける!?えッッッまさか味をつける…?
こ、
こ、これは!?!?!?!?!?!?
うーむアブラおっきいのコールをしても常識的な量が出てくるのは神保町のいいところだ。
ヤサイ食らって出てきた麺の山は健全な量だった。ヒュー、これは安心だ。
というかアブラより麺だしスープなんだよな、とか思いながら俺はヤサイを喰らい、残雪を確認した。ここだけ俺、まず啜った。シビれる味だぜ…
麺をひっくり返してズルッとやればもう死ぬしかないと思うほどの旨味。今回のやつ美味すぎだ、、、14時も回っていたのに朝一フレッシュスープの香りすら思わせるシャープネス…心臓麻痺レベルの洗練感。
勢いよくバキュームし、ニンニクも混ぜて食うと本当に、これ以上美味いものはこの世の中には存在しないと思えるものだ。このキャプションは上手くできてると思ったからそのまま使おう。そう、今日のキャプションはほぼ過去のコピペである。
ブタさんもキレーな厚めのブツ。これくらいのものを2枚、味わって食うことこそ一番の醍醐味と言える。
しかしながら手は!止まることなく!!5分間の無呼吸運動の如く麺をすすればあっという間に消えてしまった…というか一口がやたらでかくなってしまった気がする…
ほぼ食い終わりのところで隣に座ったデカブツは厨房から聞こえてきた
「まだ…やるかい…(おかわり?)」
という言葉に戦慄し、
力なく「げ…元気…イッパイ……だぜ…へっ……」と吐き捨ててフィニッシュムーブ。
ニンニク少なめコールしただけなのに
「遠慮しなくていいんだぞ」とか言われてたヤツもまた
「足りた?」攻撃を食らって戦意喪失。
俺は余裕の笑みを浮かべて完食フィニッシュムーブ深々と会釈して退店!!
帰りの電車で死にそうな顔をしている二人を見ながら俺はそう余裕をブッこいていたが、中央線車両のシートに座った瞬間に武蔵と対峙し終わった伊藤一刀斎並みに崩れ落ちた。
DMBQ最高〜!という元ネタに反応してくれるあなたは立派なNumber Girlファンである。